参院選に向けて、私たちの主張を多くの方と共有したいと思い、5.13集会での性暴力許さない女の会のスピーチを全文掲載します。
私たちは性暴力を許さない活動をしている市民団体です。
今回アベ政治をなんとか終わらせたいと思って賛同団体になりました。
なんで性暴力を許さんみたいなグループが入ってんねんと思われるかもしれません。
政治的課題に女性政策というのがいまひとつ見えてこないな〜と思っていました。これはなんか言わなあかん。そして、女性政策の中でも性暴力を許さないという立場から、私たちは貧困も、改憲も、性暴力も一人一人の生活と関係があるのだと言わなあかんのちゃうかなと思いました。
貧困や格差が問題になっています。貧困は自己責任であるという刷り込みが当事者を苦しめています。生活保護を受給するくらいなら死んだ方がマシというところまできています。
そういった自己責任論は、当たり前のように性暴力被害者にも押し付けられています。性暴力の場合、もっと徹底していて、なんと法律がそう決めているのです。というのも、刑法強姦罪の条文に「暴行または脅迫を用いて」とあって、必死で抵抗したけどやむなく被害にあいました、という場合だけが強姦罪だということになっているからです。実際の強姦事件で「暴行または脅迫」が用いられたと立証できるケースはとても少ないのです。
まず、第一に目撃者がいない。それから、人間はこんな時恐怖やショックで抵抗できなくなるのが当たり前だということ。そして、実際には加害者が親や家族や教師や知人などなんらかの顔見知りの場合が7、8割だから、そんな相手にがむしゃらに抵抗するわけにもいかない、などなど、という理由があって難しい。すると加害者は罰されない。強姦されたのはされた方にも責任がある、となります。
性暴力被害は、巷にあふれています。家にいられなくて、街に飛び出し、風俗で働くようになった若い女性がたくさんいます。よく聞けば生育歴の中に、性虐待や、DVなど性暴力被害の経験のある人が多い。
また、性暴力被害は、労働の場でも起こります。正社員から見ると非正規は取り替えのきく部品のようなもの。非正規の女性が性暴力被害に遭うことは珍しくありません。簡単に首にされてしまう弱い立場だから、何かあっても我慢せざるをないのを知ってのことです。そうした性被害によってPTSDなど精神疾患を発症し、働けなくなった女性もたくさんいます。
また、普通のバイトでは賃金が低すぎるので、風俗店で働く大学生もいる。最近では風俗も立派な仕事だからかまへんのちゃうん、という声も多い。
でも、これは実際の話ですが、2011年性犯罪の常習者による未成年女性への強姦無罪判決がありました。最高裁で無罪です。加害者の方は何十件と性犯罪をしてきた人間だったのに、未成年女性の証言の方は信用されませんでした。なぜなら、その女性は水商売のアルバイトをしていたからです。「ただの未成年ちゃうやろ、こういう危ない状況にも慣れているはずやろ、それなのに殺すぞと言われたくらいで逃げられへんかったなんて不自然や」と裁判官が考えたわけです。中身はただのオッサンです。
このように、女性が水商売や性的なサービスをする仕事をしていたら、性暴力の被害を受けても、被害ではなかったことになる。性暴力を受けてもしかたがない女性という分類に入れられてしまうのです。
これはどこかで聞いた話だと思いませんか。従軍慰安婦問題です。もともと商売でやってたんだから性暴力じゃないという言い方とそっくりです。不思議なことに日本人の従軍慰安婦で名乗り出た人はたった一人しかいません。なぜだろうと思いませんか。日本人慰安婦は確かに、特に初期には戦前の公娼制度で売春に従事していた女性が中心だったでしょう。が、彼女たちの多くは貧困家庭の出身で戦前の家制度の中で親に売られた、いわば人身売買の被害者でもあるのです。
ところが仕事で性を売っていたとなると、それ以前の、人身売買の被害も見えなくなるし、その後の、慰安婦として受けた性暴力も見えなくなる。
また、日頃差別されていた彼女らが慰安婦募集に応じたのは、提示された条件の良さもあったでしょうが、愛国心を鼓舞されたためとも言われています。お国のために尽くすのだから、差別されてきた自分たちもきっと立派に認められるだろうという期待があったのです。愛国心は弱い立場の人を、こうやって利用するのです。
そう考えるとアベ政治のやろうとしていることは、戦前回帰そのものに思えてなりません。今の日常で性暴力があるのに、戦争になったらなくなるなんてありえない。女性を分断して差別を持ち込み、利用するでしょう。
性暴力を受けてもしかたのない女性はいないと思います。また、性暴力を受けてもやむを得ない状況などあっていいはずがありません。だから、アベ政治はこの夏でなんとしても終わらせなければなりません。