性暴力の定義

 

私たちは、強姦を特殊なことのように思い込まされています。

しかし、警察の防犯ポスターにあるような「暗い夜道で見知らぬ男に襲われる」ばかりが強姦ではありません。

「東京強姦救援センター」の相談電話の統計や、私たちの受けた相談、内閣府の調査でも、むしろ「室内で」「知っている相手から」の被害の方がはるかに多いのです。

このように強姦という性暴力ひとつとってみても、その認識は間違った社会通念に塗り固められています。

 

私たちは、本人が望まない、あらゆる性的体験、性的はたらきかけ、性的おびやかし、性的言動を性暴力と考えています。

「事故にあったと思ってわすれなさい」「あなたに魅力があったからよ」「そんなに深刻に悩むことないじゃない」「男ってそういう生き物よ」「どうして逃げなかったの?」…。

 

まったくあなたの気持に寄り添えない言葉が、相談を持ちかけた相手から、あるいはあなた自身の心の中から出てくるかもしれません。

 

そして、思い悩み、忘れられない自分の方がこだわりすぎてるんじゃないか、おかしいんじゃないかと思ってしまいがちです。

 

つまり、望まない行為を受けた被害者が、自分自身を責め、声を上げにくいのがまさしく性暴力の現実です。被害者に混乱が生じるのは当たり前のことです。

 

性暴力にあうと、人は、自分ではコントロールできない感情の激しい起伏を経験します。

混乱、動揺、無気力、自己嫌悪、人間不信、喪失感、怒り、不安、絶望…。

 

自分のそれまで生きてきた安全な生活が、足元から崩れ落ちたような恐怖の体験を、冷静に整理し対応するのはとても困難で苦しい作業です。

 

ですが、あなたがここにたどり着いたということは、生きることに対するあなたの強さ、力の表れであり、自分自身を癒し回復するための一歩を踏み出していることにほかなりません。

 

あなたは性暴力によって犠牲者にされただけではなく、危機的な状況を生き延びてきた、力を持った尊敬に値する存在なのです。

そのような多くの困難を乗り越えてきた方を、私たちは尊敬をこめて「サバイバー」と呼んでいます。

 

あなたはひとりではありません。

 

あなたは立ち直る力を持っています。

 

私たちの会がみなさんのお役に立てることを願っています。

 

 

 

* 性暴力を許さない女の会編著『サバイバーズハンドブック』(新水社刊) 

  「はじめに」より一部加筆して抜粋

会員募集!

サポートしてくださる会員を募集しています。詳しくはこちら

訪問者数